A 自然公園へ

しのぶ「本当に“自然公園”に行くのですか?」

そうま「まー、みんなで決めたことだしな。いなかったら、さすけは放っておこうぜ」

ねね「そーね……その時はその時で」

しのぶ「……」

たつひこ「しのぶ、どうしたの?」

しのぶ「……なさい」

そうま「あ?」

しのぶ「ごめんなさい。あの手紙を捨てたのは、私です」

ねね「……しのぶ」

駅へと向かう道すがらであったが、突然の告白に一同は歩みを止める。

しのぶ「今日、少しだけ葬儀場に早く着いたの。そうしたら明爺さんが“リボンのついている人に”って、さすけ君からの手紙を渡してきたの。今日は珍しく、小さなリボンで髪を結んでいたから勘違いしたんでしょうね……。そして、内容を確認して、きっとねねちゃんへの手紙だろうと察して……つい隠しました。私はさすけ君のことが好きで、邪魔をしたんです」

ねね「そうだったんだ……」

しのぶ「最低ですよね、私。さすけ君がみんなと仲良くするきっかけをくれたのに、こんな形で仕返しをしちゃうんですから……。みんな、ごめんなさい」

ねね「……」

しのぶ「私は、さすけ君に合わす顔はありません。申し訳ありませんが、ここでお別れします。みんな、さすけ君によろしく伝え……」

ねね「バカ!」

しのぶ「え?」

誰もが凍りついた。《ねね》が《しのぶ》に歩み寄ったかと思うと、手を振りかぶる。《しのぶ》は目をつぶり、振り下ろされる掌に身構える。勢いなく、ゆっくりと振り下ろされる手は小さくこつりと《しのぶ》の額に当たる。

しのぶ「ねね……ちゃん」

ねね「私はそんなこと気にしないよ。私だって……好きな人には振り向いてもらいたいもん。同じ気持ちだよ!!」

しのぶ「ねね……ちゃん」

ねね「……人を好きになるってそういうことだと思う。私は気にしない。ううん、私も同じ立場だったらそうしてると思う」

そのまま《ねね》は《しのぶ》にしがみついた。目には大粒の涙をためながら。

ねね「気にしないで、しのぶがこのまま帰ったら私が悲しい。“ごめんなさい”って気持ちがあるんだったら、帰らないで一緒にさすけのところに行こう」

しのぶ「ねねちゃん……ありがとう」

そうま「(たつひこにだけ耳打ちをして)なんかよくわからないな、女って」

たつひこ「え……わからないの? さすがだね」

一呼吸置き、再び展望台に向かって歩みを始めた。

そうま「お!おーい、さすけぇ!!」

自然公園内にある展望台。そこに《さすけ》はいた。文庫本を片手に待っていたが、なにやらシリーズもののライトノベルで、今読んでいるのは4巻。待ち時間のうちにそこまで読み進めたようだ。《さすけ》は全員でいることに驚きはしたが、いつもの調子で会話を進める。3年間の経過などなかったかのように。

さすけ「みんな揃って何してるんだ?」

たつひこ「色々あったんだけどさ、とりあえず宝探し手伝ってよ」

さすけ「宝探し?」

ねね「そ、玲兄からの贈り物。みんなで探そうよ!」

しのぶ「一緒に行きましょう」

さすけ「いいけど、もうすぐ日も暮れるぞ」

そうま「ま、目星はついてるから行こうぜ!」

ねね「あと……何か話が合ったら後で聞くね」

さすけ「……ああ」

全員で玲兄の示した場所に向かう。長かった影も消えそうになっていた。

※そうま・ねね・たつひこ「《さすけ》を見つける」を満たしました。

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